二〇〇六年 三月 二十四日(

旧暦 二月二十五日 友引
丙戌年 二月廿五日

「マネー・ボール」

マイケル・ルイス 著、 中山 宥 (訳) ランダムハウス講談社文庫 Amazon

かなり面白い本だった。
ただ、読んでて嬉しい本ではない。内容は興味深いが、頭の隅で「何かが違う」とチリチリ鳴るものがある感じがするのだ。

最近「スモール・ベースボール」という言葉が盛んに聞かれる。昨年のホワイトソックスの活躍やWBCの王ジャパン優勝も「スモール・ベースボール」がキーワードだ。
高校野球の影響かも知れないが、日本人にはこういうタイプの野球は人気がある。僕もどちらかというと好きな方だ。

だが、この本の中で、「スモール・ベースボール」は完膚無きまでに否定される。盗塁、送りバント、ヒットエンドラン・・・。これらは「マネー・ボール」の主役であるアスレチックスGMビリー・ビーンに言わせれば、第一級の重罪ということになるだろう。


その理由はこの書の中に説明されているわけだが、結局のところ「マネー」を生むベースボール、すなわちコンスタントに(何年も続けて)プレーオフに残れるチームを作るために必要なのは、いままで僕たちが慣れ親しんだ、首位打者とか、ホームラン王、打点王、最多勝利投手を争うような選手を集めることではないということなのだ。

打率や打点、投手の勝ち負けの数など、僕たちがこれまで普通に使ってきた数字が、実はたいした意味を為さないというのは、確かにその通りだと思う。
だが、いままで疑いもなくその数字をモノサシにして野球を見てきた。少なくとも僕は。
それはただ、他のモノサシをマスコミもあまり積極的に提供してこなかったし、公式記録としても残してこなかったからというだけの理由だ。
ほとんどの人が、野球チームの強弱はそれらの数字に現れないような、人智を超えた神の采配が最終的には決めることであって、どんなに良い数字を持った選手を集めても、シーズンの勝敗は約束されないと考えてきたし、今も考えていると思う。
トップバッターには足の速い選手、2番には小技の巧い選手、3番にはアベレージヒッター・・・というような理想的なチームが出来上がったとしても、必ずしも優勝できるわけではない。それはグランド上では人間には予測不可能な神の采配に従わなければならないからだ・・・と。
だが、その神の領域は存在しているとしても、実は多くの人が考えるよりはずっと小さな領域でしかなく、そのことを信じてチームを作っている人たちがいたのだということを、この本は教えてくれた。

そして、アスレチックスの成功によって、この考え方は徐々にメジャーリーグの世界に広まりつつあるという。
となれば、日本でも先進的にそういう手法を試みる球団も増えてくるだろう。
そして僕が好きなドラゴンズも、落合監督になってかなりそういうカラーが強まった気はする。

・・・「スモール・ベースボール」は世界を制したが、それはWBCが短期決戦だったからであって、シーズンを通じてそれを通すことは適策ではない。それでは勝てない(らしい)。

でも、やっぱりそういう走り回る野球をするチームの方が好きかも知れない。
難しい。

Posted by mura at 2006年3月24日 19:30 | トラックバック
コメント

マネー・ボールは私たちの今まで持っていた野球の価値基準を否定してくれた良い本だと思います。

Posted by: 猫一 at 2006年4月 9日 16:21

僕自身は完全に「否定」はできないんですよね。
いままでの慣習の毒に染まりきってますから(笑)。
でも、そういう既成概念だけでは測れない価値基準があって、それを活用することで実際に強いチームを作ったというのは多いに評価すべきことですね。

Posted by: mura at 2006年4月10日 12:44
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