二〇〇五年 十二月 十三日(

旧暦 十一月十二日 仏滅
乙酉年 十一月十三日

「誘拐の果実」上下

真保 裕一 著 集英社文庫 Amazon

僕にとって、映画を見るようにサクサク読み進むことができるのが、真保裕一の一連の作品だ。

初期のミステリ作品や「ホワイトアウト」のような冒険活劇風の作品、「奪取」のようなちょっとコミカルなものなど、真保裕一の作品の舞台はやスタイルはバラエティに富んでいるが、一連の作品に共通するのは、なんといってもそのテンポのよさ。

物語の構成からもろもろの描写、登場人物の台詞回し、そういうものが良いバランスで組み合わさって、読者に物語を楽しむということに集中させてくれる。

映画などでも、ちょっとしたセットの安っぽさとか、違和感のある演技が気になって、いまいちストーリーにのめり込めないということがあるけど、優れたストーリーやプロットだけでなく、そういう安っぽい綻びが非常に少ないのが真保裕一の小説だと思う。

この「誘拐の果実」も例外ではない。ちょっとばかり風変わりな誘拐の物語だが、文庫上下巻になるだけの分量も忘れさせるくらい一気に読ませてくれる。もちろん、ストーリーそのものに対する好き嫌いはあるだろうけど、ミステリを読んだ後に、ゲームのクリア感というか、パズルの完成の達成感のようなものを求める人にとっては、それなりの重量感のある手応えを残してくれるはずだ。


ただ、真保作品全般についての僕の印象としてあるのは、良くも悪くも「みんながみんな、いい人だなぁ」というものだ。

これ自体は決してネガティブなことじゃないと思うのだけど、主人公はもちろん、いわゆる悪役も端役も、だいたいがみんな「いい人」で「一生懸命な人」なのだ。
どうしようもなく屈折している人とか、ものすごく性格の悪い人とかが、ほとんど出てこない。

性格の悪いのも出てくるけど、それはそれなりに一生懸命悪役を演じているので、気持ち悪いとか、気色悪いという感じではない。

もちろん、それだから、真保作品につき物の爽快な読後感があるのだけど、どこかで一度ぐらいそれを裏切って欲しいなという期待もある。

「なにそれ・・・」と読者を崖ップチから突き落とすようなのも、たまにはいいと思ったり。
贅沢すぎる望みかな。

Posted by mura at 2005年12月13日 17:33 | トラックバック
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